未来への一歩

北区の風水害対策と、私たちが日常のなかで備えておけること

環境省、文部科学省、農林水産省、国土交通省、気象庁が合同で企画・監修したレポート(「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018 日本の気候変動とその影響」)によると、近年、豪雨は増加傾向にあり、土砂災害の被害規模が大きくなっています。たとえば2017年の九州北部豪雨災害では、広範囲にわたる斜面崩壊や土石流が直接的な災害の原因となりましたが、これに伴って多量の土砂が下流域に流出し、河川を埋め尽くすような河床上昇を引き起こし、甚大な洪水氾濫を助長する原因となりました。

この先、気候変動がますます進むことによって豪雨の頻度・強度が増加し、各地でこのような深刻な被害が生じる可能性が懸念されます。

警戒レベルと各レベルでとるべき行動を知っておく

台風や水害は、地震とは異なり、ある程度の予測が可能な災害です。気象庁から大雨警報や洪水警報といった防災気象情報が発表されますが、これらは「警戒レベル」に対応しています。「警戒レベル」とは、いざという時に自分の命を守るための行動に移すための指標として、とるべき行動を直感的にわかるようにすることを目的に策定されています。近年では、「特別警報」の発表を目にする機会が増えてきていますが、「警報」が発表された時点で危険な状態は迫っています。「警戒レベル」の内容を理解し、いざという時に命を守る行動がとれるようにしましょう。

警戒レベル1「早期注意情報」とレベル2「大雨・洪水・高潮注意報」については、気象庁が発表するため、北区での発表はありません。

警戒レベル3は、高齢者など避難に時間のかかる方が避難する指標。警戒レベル4は危険とされるエリア内にいる全員が安全な場所に避難しなければならないという避難指示です。警戒レベル5は「緊急安全確保」となり、命の危険が差し迫っていることを示します。そのレベルに達するより前に状況の変化を把握し、早めに避難できるように心がけましょう。尚、大雨警報については、大雨のピークが過ぎて小康状態となっている時にも発生する可能性があります。解除されるまでは、油断せず警戒を続けることが重要です。

内閣府警戒レベル情報チラシの画像。警戒レベル4は避難指示で必ず避難です

(出典:内閣府「内閣府警戒レベル情報チラシ」)

ハザードマップとマイ・タイムライン

自然災害による被害を予測し、危険度を地図化したハザードマップは居住エリアでどんな災害が発生する可能性があるかを知るために有効です。浸水や土砂崩れといった災害リスクを事前にチェックするだけでなく、区が指定する水害対応避難場所も記されているので、避難先までの安全なルートを確認しておきましょう。

東京都北区水害ハザードマップの表紙画像

(北区公式HP「東京都北区水害ハザードマップ」)

 

このハザードマップを用いて、いざという時に、慌てず避難に備えた行動をとるための防災行動計画として「マイ・タイムライン」があります。「マイ・タイムライン」では、風水害からの避難に必要な知識を習得しながら、避難先・経路、避難のタイミング等をあらかじめ決めて計画をたてます。風水害からの「逃げ遅れゼロ」を実現するために、区民一人ひとりがマイ・タイムラインの作成・活用をすることが大切です。

北区では「マイ・タイムライン」の理解の促進や水害への事前の備えとして、区民の方を対象に「マイ・タイムライン作成講座」を実施しています。実施時期については、北区公式ホームページ「マイ・タイムラインを作成しましょう」を参照ください。

https://www.city.kita.tokyo.jp/bosaikiki/bosai/suigai/mytimeline/mytimeline.html

また、「東京都防災ホームページ」では動画でマイ・タイムラインの作成方法を紹介しているほか、デジタル版のマイ・タイムラインの作成を行うことができますので、ぜひご利用ください。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/mytimeline/

家族で避難場所を確認しているイメージ画像

信頼できる情報サイトや役立つアプリ

災害時には、さまざまな情報が拡散されがちです。不確かな情報に振り回されないためにも、最新かつ正しい情報を政府や自治体の発信で確認するようにしましょう。

北区では、令和6年度より「北区防災ポータル」を開設し、防災気象情報、避難情報の発令、避難所の開設状況、停電、断水の状況、鉄道の運行状況などを一元的に確認できるようになっています。「北区防災アプリ」も提供しており、自己位置と避難所の位置をマップで表示できるほか、プッシュ通知により、より迅速に最新の情報を受け取れるようになっています。

また、「北区メールマガジン」にご登録いただくと気象警報等の発令、国民保護情報、氾濫危険情報、熱中症警戒アラート、振り込め詐欺の注意喚起など、各種情報を入手することができます。ぜひ、ご活用ください。

北区防災ポータルサイトのトップページ画像と北区防災アプリのメイン画像

(北区公式HP「北区防災ポータル・北区防災アプリ」)

 

また東京都では「東京都防災アプリ」をダウンロードできます。「東京都防災アプリ」では、”あそぶ、まなぶ、つかう”を三本柱に、防災の基礎知識や暮らしのなかでできる防災対策、災害時に役立つコンテンツが充実しています。前もってダウンロードし、使い方を把握しておけば、災害時の閲覧でスマートフォンの充電をセーブできます。

備えておくと安心な防災グッズ

家を離れて避難する際に持ち出す非常用持ち出しバッグは、ひとりでさっと持ち出せる大きさ・重さで用意しましょう。また、外出先で被災した際の備えとなる防災ポーチも用意しておくと安心です。防災ポーチは毎日持ち歩けるように、必要最低限のものをコンパクトにまとめることがポイントです。モバイルバッテリー、ビニール袋、常備薬や絆創膏、除菌スプレー、マスクなどは、災害時だけでなく日常における不測の事態にも役立ちます。一方、避難所で過ごす可能性もある持ち出し用の非常品としては、水、懐中電灯、ラジオ、口腔ケア用品、タオル、軍手、保湿シート、非常用トイレ、除菌シート、乾電池、ソーラー充電器などがあるとよいでしょう。さらに、油性ペンと養生テープをセットで持っておけば、避難所等での連絡手段やラベルメモとして活用できます。

避難リュックのイメージ画像

子どもと一緒にできる防災対策

お子さんがいらっしゃる場合は、日ごろからお子さんと一緒にできる防災対策として、非常用持ち出し品を詰めたバッグやリュックを持って、近所の避難場所まで散歩感覚で歩いてみるのもおすすめです。避難所までの道順を一緒に歩きながら、子どもにとっても歩きやすいか、障害物がないか等も確認できます。また、非常用持ち出し品を詰めたバッグが重すぎないかも、実際に持ち運んでみると実感できます。避難時はお子さんを抱っこしたり、背負ったりすることも考慮して、負担のない重さを目安に荷物を整理することも大切です。また家の中で非常食や防災グッズを家の中で試してみたり、夜に懐中電灯をつけてトイレに行ってみたりするだけでも、災害時の予行演習になります。

災害発生時に活躍する防災ステーション

浮間地区荒川防災ステーションは、2009年6月に北区と国土交通省の共同整備により、荒川流域で初めて完成した防災ステーションです。防災ステーションとは、洪水による被害を防ぐための水防活動、災害が発生した場合の復旧活動を行うための拠点として活躍する施設のことをいいます。ここには、堤防にもしものことが起こったときのために必要な根固めブロックや鋼矢板、割栗石が備蓄されています。敷地内には水防センターがあり、水防活動用の資機材の備蓄や、災害時は応急復旧の最前線基地となる現地対策本部として利用される予定です。また、平常時において、地域住民の皆さまに緑地公園として開放しています。

水害防止対策になる雨水貯留槽の助成

都市化に伴い、地表面を覆うアスファルト等により、これまで地中に浸透していた雨水が短時間で下水道や河川に流れ込むことで、下水道や河川が一気に増水して水害を引き起こす危険が増しています。このような水害リスクの軽減には、一般住宅においても下水道への雨水の流出を抑制するために、屋根に降った雨水を集める雨水貯留槽(雨水タンク)の設置等が有効です。

雨水貯留槽(雨水タンク)のイメージ画像

 

地球温暖化対策は、温暖化の原因を削減する「緩和」と、温暖化による悪影響に備える「適応」の2つに分けられます。気候変動を抑えるためには 「緩和」が最も必要かつ重要な対策ですが、「緩和」の効果が現れるには長い時間がかかるため、気候変動による悪影響を最小限に抑える「適応」も不可欠なのです。雨水貯留槽の設置は、気候変動の影響によって引き起こされる異常気象への「適応策」に該当します。

北区では、総合的な水害対策(浸水被害の防止または軽減)の一環として、一般住宅からの雨水流出を抑制することを目的に、雨水貯留槽(雨水タンク)の設置およびその設置に伴う関連工事費用の一部を助成しています。申請にあたっては事前相談が必要となりますので、詳しくは北区公式ホームページの「雨水貯留槽設置工事費の助成制度があります」をご覧ください。

https://www.city.kita.tokyo.jp/d-douro/bosai-bohan/bosai/suigai/choryu.html

風水害対策だけでなく、気候変動対策として私たちができること

温暖化が猛暑や大雨などの異常気象の発生につながり、温暖化の原因には私たちの日常生活のなかでの選択や行動も関わってきます。先ほど、気候変動対策には「緩和」と「適応」があるとお伝えしましたが、私たち一人ひとりが防災アプリやハザードマップや避難経路を確認し、気象災害に備え身を守る準備をすることも重要な「適応」といえます。

また、気候変動の「緩和策」、すなわち温室効果ガス排出量を削減するためには、公共交通手段や自転車や徒歩で移動する選択、省エネ製品の購入、再生可能エネルギーの導入など、私たちが身近な行動で変えられることがあるのです。

北区環境ポータルサイトの「環境動画」でも、温暖化のリスクを少しでも小さくするために私たちができることについて、わかりやすく解説していますので、ぜひご覧ください。

 

北区環境ポータルサイトの環境動画の紹介画像

【参照サイト】

東京都北区 環境動画一覧

https://www.kankyoportal.city.kita.tokyo.jp/enjoy/movie

東京都北区公式ホームページ 防災・防犯

https://www.city.kita.tokyo.jp/bosai-bohan/index.html

環境省 エコジン(外部サイト)

https://www.env.go.jp/guide/info/ecojin/feature1/20231004.html